2006 03 斬揺 Determination
ー 俊 ー
三ヶ月を要したが、いよいよ作戦を決行する日がやってきた。彼らから今日、潤平さんを取り戻す。
僕と嘉人さんは潤平さんの下宿先の近くの路上に停車したワンボックスカーの中でその瞬間を待っている。
潤平さんを宗教から取り戻すためにいろいろ方法は考えたが、最終的にはカルト対策をしている団体からのアドバイスを採用することにした。
嘉人さんは秋田にある潤平さんの実家に出向き、経緯を説明した上で、家族に協力を頼み込んだ。最初は不審者に思われたと笑っていた。
状況を理解した潤平の家族は、まずは本人と話し合いたいと提案してきたそうだ。当然だろう。でも、嘉人さんはその提案を強く否定した。潤平さんに警戒されたら、金輪際彼を取り返すことができなくなる可能性があったからだ。
嘉人さんは何度も秋田に足を運び、潤平さんを説得したいという家族をなんとか説き伏せた。
最終的に、潤平さんの家族も嘉人さんを信じることにしたわけだが、今日の計画を話した際はお母さんと妹さんは泣いていたそうだ。
一方、僕は達也さんから聞いた国が公認しているというキリスト教団体など複数の宗教団体やカルト対策をしている団体に出向き、今回の作戦を入念に練り上げていった。最終的には、一番まともそうなキリスト教系の宗教団体に協力してもらうことになっていた。
チャンスは一度きりだ。失敗は決して許されない。
約束の時間が近づいてきた。
約束の時間の5分前、潤平さんが下宿先から出てきた。
それを確認した嘉人さんが潤平さんの妹の楓ちゃんに電話をかけた。
「楓さん、潤平君が出てきました。打ち合わせどおり、公園の駐車場に誘導して下さい。」
「わかりました。」
始まった。ここまでは予定どおりだ。
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